兌換紙幣と不換紙幣は言葉が非常に難しい上に近代日本の経済政策を見ていくうえで欠かせないものです。

 

今回は『兌換紙幣と不換紙幣』について、とても重要なこの2つの用語の違い、メリットとデメリットをわかりやすく解説していきます。

 

兌換紙幣と不換紙幣の違い

 

 

まずは兌換紙幣と不換紙幣の違いを簡単に説明します。

兌換紙幣と不換紙幣

兌換紙幣・・・正貨と交換義務のある紙幣

不換紙幣・・・正貨と交換できない紙幣

 

正貨というのは貨幣の中で実質的な価値と額面上の価値が同じ貨幣のことです。ちょっと難しいかもしれません。

 

例えば、お札を考えてみてください。

 

私たちが使っている1万円札。1万円札だって実際はただの紙切れですが、日本国が「1万円の価値がある紙だ」ということによって初めて1万円の価値を持ちます。

 

これは実質的な価値を持ちませんが1万円の価値を持ちます。正貨はどうでしょうか。

 

正貨の場合、1万円と言われたら本当にその貨幣が1万円に相当する金や銀で出来ていました。これを正貨といいます。

 

(日本の正貨 明治4年旧1円金貨 出典:Wikipedia) 

 

兌換紙幣について詳しく

(兌換紙幣 出典:Wikipedia

兌換紙幣とは

兌換紙とは正貨と交換義務のある紙幣のことです。

 

つまり1万円の紙幣を国に持って行ったとき国は1万円分の正貨を渡さなければなりません。

 

兌換紙幣のメリット①『信用を生みやすい』

兌換紙幣は信用されやすいです

 

兌換紙幣はいつでも国に持っていけば正貨と交換することができます。つまり、紙幣が正貨によって価値を裏付けられているということです。

 

例えば、政治における主導的な位置を戦争によって奪うことができた政権を考えてみてください。

 

いくらその時に政治におけるトップに位置するといえども、国家は荒れたままでいつでも転覆する可能性だってあるわけです。

 

そんな国が「今からこの国を1万円とする」といっても転覆した瞬間に価値を持ちません。ですが兌換紙幣ですと1万円が正貨によって裏付けられているので政権が変わっても1万円の価値を持ち続けます。

 

つまりいつの時代でも一定の価値を持つ金属で出来た正貨によって信用が得やすいというわけです。

 

これは外国との取引でもいえます。

 

外国だっていついかなる場所や時でも同じ価値をもつ金属によって価値を持ち、信用のある紙幣でないとやり取りできません。日本で使えても外国でただの紙切れとなると困るのです。

 

兌換紙幣のメリット②『価値が安定しやすい』

兌換紙幣は価値が安定しやすいです

 

多くの場合、正貨は金や銀で作られました。今でもそうですが金や銀といった貴金属は非常に貴重であり急に増産可能になったり逆に急に数が減ったりすることはまずありません。

 

貴金属は量がほとんど一定であるため価値が安定しやすいのです。

 

そのような価値が安定しやすい貴金属で出来た正貨ももちろん価値の変動は少ないです。だからその正貨で価値を裏付けられる兌換紙幣は価値が安定しやすいのです。

 

価値が安定すれば取引の際に非常に大きな力を持ちます。

 

たとえば、今持っている1万円の価値が安定せずに5年後には2000円になっているような世界。そんな1万円札誰もほしいとは思わないでしょう。逆に価値が安定した紙幣だと取引で使っても問題ないと思われるようになります。

 

取引をする際に価値の安定は非常に大事な要素なのです。

 

兌換紙幣のデメリット①『発行量が限られる』

兌換紙幣は逆にいうと発行量が正貨の量で決まってしまいます

 

正貨を十分に用意できない国では兌換紙幣の発行が少なくなってしまい貨幣の数が足りないという事態も十分にあり得ます。

 

明治政府も一時期はそのような事態に陥り我慢できず不換紙幣を発行していました。

 

貨幣の数が足りなくなれば取引も十分に行うことができません。経済活動が停滞し不景気を引き起こすもとになります。

 

国立銀行条例が出された直後の日本は正貨が十分でなかったため紙幣の発行数が著しく少なくなりました。

 

 

兌換紙幣のデメリット②『貿易赤字に弱い』

兌換紙幣は貿易赤字になったときに大変な事態に陥ります

 

貿易赤字は貿易によって一国から出ていくお金の数の方が入ってくるお金よりも多い状況です。

 

兌換義務のある紙幣は国が持つ正貨以上に貨幣を発行することはできないので仮に貿易赤字で紙幣が出ていっても増やすことはできません。

 

つまり貿易赤字になればどんどん通貨量は減っていってしまうのです。こうなれば先ほどの①「発行量が限られる」と同じような状況に陥ってしまいます。

 

有名なケースだと1917年と1931年に実施された金輸出禁止

 

これはこれ以上国から金が出ていけば通貨量が減りまともな経済活動が国内で出来なくなることからでした。このように兌換紙幣は貿易赤字の際に大変な状況を引き起こします。

 

このように兌換紙幣は国内の取引はもちろんのこと特に外国との取引の際にとりわけ重要な役割を持ちます。

 

日本が金本位制を急いだのもヨーロッパとの取引を増やすためでした。

 

 

しかし、一度国内で不景気に陥ると通貨量を増やすことができなくなり経済活動が停滞してしまうリスクを抱えていたのです。

 

不換紙幣について詳しく

不換紙幣とは

不換紙幣は兌換紙幣の逆で正貨と交換しなくてもいい紙幣のことです。

 

不換紙幣の場合は、国家が紙幣の価値を裏付ける本体になります。

 

つまり国家が信用できるから紙幣も信用できるようになるのです。例えば、今のお金。日本国が信用できるから私たちは1万円札だと思えます。

 

不換紙幣のメリット『発行量に限りがない』

不換紙幣は正貨に数で通貨量が決められないので政府の都合で通貨量をコントロールできます。

 

通貨量が少なく経済活動が滞っている、あるいは国家に緊急の出費でお金が必要になった際に不換紙幣を刷ってお金を動かすことができます。

 

有名な例が1868年の太政官札と民部省札。当時は殖産興業や西南戦争でお金が必要になったため不換紙幣である太政官札と民部省札を流通させることで取引を活発にさせようとしました。

 

また、高橋財政昭和恐慌で極度な不景気に陥っていたため、通貨量を増やし公共事業、軍事力に投資する財政政策も行うことができました。

 

不換紙幣のデメリット①『社会情勢に影響を受けやすい』

不換紙幣は社会情勢の影響を直に受けます

 

先ほども述べた通り不換紙幣は国家の信用があって初めて成り立つお金です。国家の信用がなくなった際には簡単に紙幣は紙切れになってしまいます。

 

さらに先ほどの「通貨量をコントロールできる」が裏目に出る場合もあります。

 

それが通貨量を増やしすぎたときです。

 

なんでもそうですがモノは程ほどにあるからそれなりの価値を持つものです。増えすぎたら貴重ではなくなり価値が下がります。紙幣も同じで量が増えすぎたら価値が下がります。

 

こうしたデメリットがもろに出た局面が1868年の太政官札と民部省札の発行

 

これらは不換紙幣でしたが政府が大量に刷りすぎたうえに政府への信用もまだない時代だったので価値はみるみる低下していきました。

 

不換紙幣のデメリット②『国際取引が行われにくくなる』

不換紙幣は国家に対する信用があって初めて成り立つものです。

 

もし、外国が国家を信用しなければ急に価値を失うかもしれないお金と取引したいと思いません。リスクが高すぎるからです。新興国家にとって不換紙幣は国際取引の障壁となります

 

このように不換紙幣は通貨量をコントロールできるため不景気の対策も行いやすくなります

 

しかし、不換紙幣は国家の信用がまだない時に発行しても意味をなさないうえに経済政策が一歩間違えば価値が急落するリスクを抱えています

 

まとめ

 兌換紙幣とは正貨と交換義務のある紙幣のこと。

 兌換紙幣は信用を生みやすく価値が安定する。

 一方で兌換紙幣は通貨量が操作できず不景気にめっぽう弱い。

 不換紙幣とは正貨と交換義務のない紙幣のこと。

 不換紙幣は通貨量が操作でき景気対策を行いやすい。

 不換紙幣は信用がないと扱ってもらえない。




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