“関東ローム層”という言葉は聞いたことありますね。

 

その地域もおおよその内容も、おそらくはほとんどの人が答えることができないかもしれません。

 

そこで今回は、『関東ローム層』について特徴など詳しく解説していきます。

 

関東ローム層とは?

 

 

関東ローム層とは、元々は関東地方の台地や丘陵に広く堆積する火山灰層のことです。

 

赤土と呼ばれる赤褐色の土層で、火山灰で構成されているため風化して粘土質になっているといわれています。

 

関東ローム層の意味

①「関東」はどこまでを表すの?

関東ローム層は関東地方西側の富士山・箱根山・愛鷹山などの火山や、北側に当たる浅間山・榛名山・赤城山・男体山などの火山から関東平野に降った灰が風や水によって流されたりして出来てきたものです。

 

その降灰地域から都道府県で考えると神奈川・東京・千葉・埼玉・茨城くらいでしょうか。

 

広くみれば静岡・山梨・栃木・群馬も含まれるかもしれません。

 

②「ローム」とは何?

(ローム 出典:Wikipedia

 

 

ローム(loamとは土壌区分の1つで、土壌に含まれる砂と粘土の割合を示す土の特性を示す言葉となっています。

 

ロームの名称は1881年地質学者のダーフィト・ブラウンスによって命名されました。

 

砂土と粘土の中間で、砂の含有率が1/3以上の粘土質の土壌のことになります。

 

ちなみにロームは単に土壌中の粗粒組成比率を示しているのであって、火山からの物質であるとか赤色であるとかは全く関係ありません。

 

③「関東ローム」と「関東ローム層」

「関東ローム」はその土壌を示す名称で、そのロームで構成された地層のことを「関東ローム層」と呼びます。

 

例えば、『赤土の火山灰土』のことなら「関東ローム」で、『赤土の火山灰土で覆われた土地』ならば「関東ローム層」という区別になります。

 

関東ローム層の成り立ち

①いつ頃からできたのか?

地質学では沖積世(ちゅうせきせい)の中期から後期(約1万年~40万年前)に形成された地層と言われています。

 

たくさんの火山に囲まれている関東地方では、火山の噴火で巻き上げられた火山灰などが風で遠くに吹き飛ばされ、それらが堆積し「関東ローム層」を作っていったと思われていましたが、近年では火山灰のみではなく、風で運ばれた塵も多く含まれていることが分かっています。

 

これら塵には火山の河口付近の土地や火山以外の土地から風で舞い上がったもの、また黄砂(こうさ)のように遠方の大陸からもたらされたものもあるのです。

 

②層の分類

南関東地方の関東ローム層は、その組成などから形成年代が区分されています。

 

形成年代の区分

  1. 多摩ローム層…約13万年前~40万年前
  2. 下末吉(しもすえよし)ローム層…約6万年前~13万年前
  3. 武蔵野ローム層…約3万年前~6万年前
  4. 立川ローム層…約1万年前~3万年前

 

火山噴火のない時期には少しずつ塵などが堆積して層をつくり、噴火などでは一気に火山灰などが堆積して厚くなり、というのを繰り返していたようです。

 

東京付近の立川ローム層の厚さは、3m程度またその下武蔵野ローム層は武蔵野段丘では3~5mあり、下末吉ローム層は東京近郊は5m程度ですが、関東北部などでは厚くなるそうです。

 

一番下の多摩ローム層は2030mになり一番厚く、大磯丘陵では150m以上にもなるとのことです。

 

この中でA.多摩ローム層やB.下末吉ローム層は箱根山の火山灰を多く含み、C.武蔵野ローム層やD.立川ローム層は富士山の火山灰を多く含んでいるそうです。

 

③含む鉱物とPH

関東ローム層は火山灰や酸化鉄を含む赤玉土と言われるものですが、その中には長石(ちょうせき)、角閃石(かくせんせき)、かんらん石、石英(せきえい)、磁鉄鉱(じてっこう)などが含まれています。

 

また、関東ローム層はPH4.06.0位の弱酸性に傾いている典型的な酸性土壌です。

 

これは元々のメインである火山灰の影響もありますが、降水による鉱物からのカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどの流失や風化、植物が腐食して有機物を分解したことで有機酸が出来て土壌が酸化したことなどの影響も大きいのではないかと考えられています。

 

関東ローム層と歴史

(岩宿遺跡 出典:Wikipedia

①遺跡の発掘

ここで発見された遺跡で有名なのは1946年民間考古学者の相沢忠洋(あいざわただひろ)によって発見された岩宿遺跡ですね。

 

太平洋戦争後くらいまで、日本列島には一万年以上前の石器文化、いわゆる縄文文化以前の先土器文化はないと考えられていました。

 

ところが相沢の発見を元に関東ローム層の中を発掘したところ、多くの石器が出土し、日本の縄文以前の時代の先駆けの遺跡となったのです。

 

ここでは後期旧石器時代初頭(35000年以前)と後期旧石器時代後半(25000年前)の石器が見つかっています。

 

②荒れ地として

家康が江戸に来たことにより関東地域が開拓されますが、この土壌は稲作には向いていませんでした。

 

歴史の中でここの土壌の話が出てくるのは、『享保の飢饉』の時になります。

 

飢饉により食べ物が不足した際、荒れ地でも耕作できるサツマイモを栽培し、命をつないだ薩摩藩の噂をきいた江戸の農学者青木昆陽が、この江戸の土壌でも採れるサツマイモを研究し、関東各地に種芋の栽培を奨励したと言われています。

 

そのようなこともあり、埼玉の川越は今もサツマイモの名産地となっています。

 

関東ローム層の特徴

①農業との相性

上記の江戸時代からの例でも分かるように広がる地域も色々なので、一概には言えませんが「関東ローム層」は農業に適しているとはいえません。

 

火山灰の降り積もった土地なので、土地自体に植物の生育に必要な栄養分が少なく、また台地や高台が多いこともあって農業用水の確保も難しい為、特に稲作は厳しいようです。

 

同じく九州のシラス台地も火山の影響を受けた土地ですが、こちらは火砕流などが堆積しているのでさらに悪条件であり、農地としては非常に厳しいと言われています。

 

薩摩でサツマイモが生まれ、関東に来たのは必然だったのかもしれません。

 

②畑作で有名

前述のように弱酸性の土地ではあっても長い時間がたつと植物が生えるので、それが腐葉土となり徐々に栄養豊かな土地にもなっていくようですが、残念ながら関東ローム層は地球の長い歴史からみると、まだそのレベルではないとのことです。

 

ただ、おもしろいことに通常「ローム」は粘土質なので水はけが悪いはずなのですが、関東ローム層はロームでありながらも適度に砂がまじり、保水性も透水性もあるという矛盾する土壌性質を持つため、畑作には適していると言われています。

 

栃木のいちごや千葉のらっきょう、群馬のキャベツなどは有名ですね。

 

③地盤の強度

東京の地盤は液状化したりするので脆いと勘違いしている人もいますが、これは江戸期以降の埋め立て地のことであり、本来の関東ローム層は粒子間の結束が強く、自然の形であれば非常に地耐力もある強固な地層とのことです。

 

ただし、一旦掘削なのでこの結束をほぐしてしまうと脆弱なものになってしまうので要注意です。

 

よって、地震災害時に弱いとされるのは関東ローム層ではありませんが、一度崩してしまった層は元の強さにはならないため、開発した土地であれば、層は脆く地震にも強くはないでしょう。

 

④土壌改良

家庭菜園などで栽培に適した土壌にするため、色々な土を混ぜることがあります。

 

その際に使用される土で「赤玉土」というポピュラーなものがありますが、実はこれは関東ローム層の土をふるいにかけ乾燥させたものということです。

 

通気性・排水性・保水性に優れているこの土は、庭土に混ぜたりして非常に良く使われますが、こんなところにも関東ローム層があったのですね。

 

まとめ

 関東ローム層は関東地方の台地や丘陵に広く堆積する火山灰層のこと。

 関東ローム層は赤褐色の赤土であり、火山灰が風化して粘着質になっている。

 約1~40万年前の沖積世に形成されたこの層は4つに分けられている。

 層の4種は古い順に[多摩ローム層][下末吉ローム層][武蔵野ローム層][立川ローム層]。

 ローム層は多くの鉱物を含み弱酸性の土地となっている。

 旧石器時代の遺跡が発掘された相沢忠洋発見の【岩宿遺跡】が有名。

 江戸期には飢饉に備えてサツマイモの栽培が推進された。

 栄養分が少なく用水確保が難しいため、稲作には適さず、畑作が盛んだった。

 ローム層は自然の形では強固な地盤であるが、一度崩すと脆くなってしまう。

 土壌改良用の「赤玉土」は関東ローム層をふるい、乾燥させたもの。




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