【縄文時代の風習&信仰】なぜ抜歯・屈葬は行われていた!?アニミズムや土偶など

 

“縄文時代”といえば日本の歴史の中で最初に習う時代であり、毛皮をきた狩猟の姿などを思い浮かべている人が多いと思います。

 

縄文時代全般のことを詳しく見ていくと大変なボリュームになりますので、ここでは一部の『縄文時代の風習&信仰』について解説していきます。

 

縄文時代の風習&信仰とは?

 

 

縄文時代の信仰として、万物に精霊が宿るとされる【アニミズム】。

 

そしてアニミズム同様自然への畏怖の念から、超自然的な力をもつシャーマンの力を借りようとする【シャーマニズム】が知られています。

 

あの有名な土偶もこのシャーマンに使用されたのではないかと言われています。

 

また当時の風習として、死者の再生を恐れ手足を折った形で埋葬した屈葬や、成人への通過儀礼的に行われていたとされる抜歯などがありました。

 

縄文時代の風習「アニミズム」

(アニミズムの一例「アマゾンのシャーマン」 出典:Wikipedia

 

 

「アニミズム」は宗教ではなく、「考え方」をしめす言葉です。

 

タイラーという学者が最初に唱えましたが、その由来はラテン語の「anima:生命、霊魂」という言葉からでした。

 

「生物であってもなくても、この世の万物のものには命、霊魂が宿っている」としており、万物に宿る精霊を信仰したので精霊信仰とも言われます。

 

同時に自然にも畏怖の念をもつ自然崇拝の考えでもありました。タイラーは「霊的存在への信仰」として捉えていたようです。

 

①アニミズムと儀式

(アイヌ民族 出典:Wikipedia)

 

 

古代にはアニミズムの思想に基づいて色々な儀式があったとされますが、北海道の先住民であるアイヌ民族にはその名残がありました。

 

じつは「アイヌ」という言葉自体が「カムイ」という“すべてのものに心が宿るとする考え”の中での「人間」という言葉でもあります。

 

アイヌの村では「神様が肉と毛皮をもってきたもの」として熊を大切に育て、やがてその熊を屠殺し、その土産(肉と毛皮)を受け取り、神様を天界へ返すとしたイオマンテという儀式があったそうです。

 

一見残酷ですが、人が生きていくうえで頂く命に対しての敬意と感謝の念を表す儀式でした。アニミズムには神や自然に対する畏怖の念とともにこのように畏敬の念もあったのです。

 

私達も食事の際に「いただきます」と言いますが、これは勿論食事を作ってくれる人への感謝の表れでもあるでしょうが、本来は“今日を生かす糧を農作物(自然)や生き物などから得ること”に対する感謝の言葉だったのかもしれません。

 

②宗教とのつながり

世界中のあらゆる宗教がそれぞれの“神”を信仰していますが、元々“神”というものが人や自然を超越した存在であると考えられているので、このアニミズムが原始的な宗教の考えであるともいえるのではないでしょうか。

 

実際に日本ではこの考え方が、八百万の神を信仰する「神道」へとつながっていきます。

 

万物へ魂が宿っているから、太陽の神様から米粒の神様までの多神教になっていったのですね。

 

③日本人の宗教観

私達日本人は多神教=沢山の神々がいるという考えが根底にあるためなのか、他の神様にも非常に寛容だと思われます。

 

例えば、当時の社会情勢の影響等も色々あったとはいえ、古代には大陸からの仏教を、さらに近世にはヨーロッパからのキリスト教も広まり、現在も色々な宗教やそれに伴う風習が入り混じって存在しています。

 

年中行事をみていてもわかる通りですね。

 

ヨーロッパでの宗教戦争の歴史を見ても、日本での他宗教への適応力は異常な位ですが、根底が“万物”なので許容範囲が大変広いのかもしれません。

 

④アニメとアニミズム

 

 

近年日本では『クール・ジャパン』として世界から評価される文化「アニメ」が有名です。

 

あれ?アニメとアニミズムって似てない?と思ってくれた人は鋭いですね。

 

実は英語のanimationが同じラテン語animaに由来し、「生命のないものに命を与えてうごかす」という意味をもっていました。つまりこの2つは由来が同じだったのです。

 

特に日本のアニメにはアニミズムの思想が強く出ているそうです。

 

例えばジブリの作品では森の精霊や人外のものが人間とコミュニケーションをとりますね。

 

またドラえもんのようなロボットも感情を持ち人と同じように飲食などの行動をとりますが、私たちはそれを違和感なく受け止めています。

 

他国の人から見ると非常に衝撃的な感動だといわれているそうですが、日本人の根底にアニミズムが残っている証ではないでしょうか。

 

⑤生活に生きるアニミズム

世界に誇る言葉「もったいない」ですが、これも単に節約だけではない、モノなどへの敬意がある言葉です。

 

同じような感覚を表現する言葉は他国にはないそうですので、大切にしたいですね。

 

また最近「○○すごい!神回だったよ~」等と発言しているのを聞きますが、その対象が人だったり、モノだったり、考えだったり、色々な凄さを表す表現に“神”を多用していますが、まさに八百万の神なのですね。

 

縄文時代の風習「シャーマニズム」

(シャーマンの一例。オロチョン族のシャーマン 出典:Wikipedia

①自然への畏怖

さて、アニミズム信仰が根付いていた中で、人々は人の力で御しえないことを何とか出来ないかと、神に祈りを捧げ霊的な存在との交渉をはかろうとしました。

 

これを行うのが呪術師(シャーマン)であり、この呪術師を中心とした信仰がシャーマニズムになります。

 

呪術師とは、「トランス状態になり霊と交信できるもの」のことだったようですが、舞踊や呪文なども使って予言や託宣などをしていました。後の時代ですが邪馬台国の女王卑弥呼も有名なシャーマンだったようです。

 

②呪術道具

(青森県で出土した土偶 出典:Wikipedia

 

 

このシャーマンが使ったのではないかとされるのが、土偶(どぐう)と呼ばれる土で作った人形です。

 

主に女性の姿をしていたことから、多産や子孫繁栄を祈ったものと言われていましたが、ほとんどが故意に破壊された状態で見つかっているため、近年では厄災などからの身代わりとして儀式に用いたのではないかともいわれています。

 

縄文時代のの風習

(抜歯 画像引用元

①抜歯(ばっし)

当時の風習として、成人した年齢、または結婚した際や葬儀の際に行ったとされています。

 

麻酔が無い状態で歯を抜くなど考えられませんが、特別な通過儀礼としてその苦しみに耐えていたと考えられます。

 

また一説によると、文字をもたなかった縄文人が、他者との識別に使ったとも考えられているそうです。

 

例えば、村ごとに抜く歯の位置に違いがあったようなので、村の区別や、成人して歯を抜くことで、大人と子供の区別をしたのかもしれません。

 

ちなみに縄文期後半になると、抜くことはやめて削るだけになったそうです。

 

②屈葬(くっそう)

(屈葬 出典:Wikipedia

 

 

縄文期の埋葬の仕方ですが、これは亡くなった人の手足を折り曲げて埋葬するものでした。

 

その理由も諸説あるようですが・・・

  • 死者の再生を恐れて手足をしばった
  • 胎児の姿勢にすることで魂の再生を願った
  • 伸展葬(まっすぐのまま埋葬)するより墓穴を掘る作業が楽

    などがあげられています。

     

    また、墓地には環状列石といって全体的に円形になるように石が置かれているものがあったそうです。有名なものに秋田県の大湯環状列石(おおゆかんじょうれっせき)があります。

     

    列石の理由ははっきりしていませんが、夏至の日にちょうど良い配列のものがある為、太陽の動きなどを示しているのではないか、ともいわれています。

     

    まとめ

     縄文時代の信仰「アニミズム」とは「万物のものに魂が宿る」とした考え方のこと。

     「アニミズム」から「神道」へのつながりがあり、日本人の根幹に根付いている・

     自然などへの畏怖の念から、力ある呪術師が祈りを捧げる「シャーマニズム」がうまれた。

     シャーマンによる呪術儀式に「土偶」が使用されたとされている。

     「抜歯」は成人、成婚、葬儀などに行われた通過儀礼とされている。

     「屈葬」は死者の再生への恐れ、埋葬の作業効率を考えたもの、来世への祈りなどが込められた等の諸説ある手足を折り曲げる埋葬方法。

     縄文期の墓地には「環状列石」が置かれていたものもある。