【条規と条約の違い】簡単にわかりやすく解説!!それぞれの意味・代表例など

 

日本史で諸外国とのつながりを学ぶ上で、特に近代になってくると”条規”や”条約”という、似たような言葉が多々登場して、訳が分からなくなった経験はありませんか?

 

しかも、教科書ではこの違いに言及したものがなく、歴史の先生に質問をしても、満足のいく答えをもらったことがなかったという方も中にはいるかと思います。

 

筆者もその経験があるので、よくわかります。

 

今回は、あなたを悩ませる『条規と条約の違い』について、それぞれの意味や代表例などを踏まえながら、簡単にわかりやすく解説していきたいと思います。

 

条規と条約の違い、実はほとんどない!

 

条規と条約ですが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか?

 

実は、日本史でいう条規と条約という言葉には、違いがほぼなく、読み方が違ったところで効力の優劣があるわけではないのです。

 

ただ、違いを挙げるとするならば、以下のようになります。

 

それぞれの違い

 

 使われていた相手国が違う

 

条規・・・漢字文化圏(中国・日本・朝鮮・ベトナム・琉球など)に対して使用されていた

条約・・・そのほかの言語文化圏で使用されていた

 

 表立って登場した時代がちょっと違う

 

条規・・・明治時代の黎明期に一瞬だけ

条約・・・江戸時代の開国時より登場する

 

 含まれている内容がちょっと違う

 

条規・・・国家間の合意だけでなく、条約とは別に条約に付随する規定(特に法令)も含めて表されている

条約・・・国際法に基づく国家間の合意事項

 

ここまではそれぞれの違いについて要点だけをお伝えしました。

 

これだけでは少々理解しにくいかもしれませんので、ここからはさらに「条規」「条約」について詳しく解説していきます。

 

条規について詳しく解説!

 

では最初に、条規について取り上げていきましょう。

 

条規とは、条文の規定や規則のことを言います。

 

つまり、お互いに取り決めた決まり事を箇条書きにした文の集まり、すなわち文書のことを指します。漢字だけで見ても、条約とさして意味は変わらないんです。

 

しかし、条規という言葉が使われているのには諸説あり、さらにちょっとした条件がありました。

 

①条規が使われているのは、日朝修好条規と日清修好条規のみ!

お気づきの方もいると思いますが、「条規」という用語が使用されているのは、実は日朝修好条規と日清修好条規のみなんです!

 

 

これらは、漢字文化圏である、日本と中国(当時の清)、そして朝鮮の間に結ばれているものとなっています。

 

②当時の中国や朝鮮では、条約を”条規”としていた説がある

違いの部分でもまとめていますが、日本も含め、当時の中国(清)や朝鮮では、条約については漢字を使用していたとされています。

 

そして各国の知識人は、外国文書を作成するにあたり、共通語として漢文を使用し、それを正文としていた歴史がありました。

 

さらに、漢文では条約のことを”条規”としていたことから、漢語文化圏同士でわざわざ条規を日本語訳の条約にする必要性もなかったのでしょう。

 

こちらの説は、かなり有力とされていて、現在の台湾が大統領のことを総統と呼んでいることと同じ現象といえます。

 

ですが、時代とともに今度は中国が日本の文化をどんどん取り入れ、条規という言葉は条約という言葉に代替わりとなっていったそうです。

 

③当時は明治時代、日本の公文書での使用文字の変更があった

日朝修好条規と日清修好条規が結ばれたのは、明治時代。

 

明治時代といえば、江戸幕府が倒れ、新たな時代の幕開けとなったタイミングです。

 

このタイミングはというと、明治時代で作られた公的文書もちょうど漢文からかな交じり文への転換期でした。

 

新たな時代への転換期というのは、政府内も混乱していたり、結構忙しかったりというのが予想されます。

 

本来は外国との取り決めはすべて条約としたいところを、漢字文化圏同士のこれまでのやりとりから条規としてしまい、政府内でもそれを見落としした可能性があったのでは?という説もあります。

 

そして、この明治の黎明期ともいわれる新たな幕開け時期以降については、外国文書では”条規”という言葉が表立って出てこなくなったようです。

 

④条約と、それに付随する規定も含めて表している説

また、条規としているのは、条約とは別に、条約に付随する規定(特に法令)も含めて表しているからだという説もあります。

 

実際に、条約の中に規定される条規とは、”第〇条”というように表されています。

 

例を挙げるならば、日清修好条規では、”第〇条”というように箇条書きで条文が制定されているほか、領事裁判権などといった法令も規定されています。

 

条約について詳しく解説!

 

一方の条約ですが、漢字だけで見ると国家と国際機関間の文書による合意した取り決めのことを指し、国家間での約定、約束という意味でも使用されます。

 

①条約という言葉は、漢字文化圏以外との取り決めに使用されていた

条約という呼ばれ方をしているものについては、アメリカなどといった漢字を使用しない文化圏との合意や取り決めには使用されていないのが特徴です。

 

②条約は国家間の取り決めや合意が掲載されている

条約は、文書による国家間の合意事項です。これは、国際法に基づいて成立する国際的な合意を表します。

 

例えば日米修好通商条約は、アメリカと日本の間での貿易に関する取り決めについて書かれています。

 

ですが、この中には領事裁判権の承認といった”国内法”についても取り決めがなされています。

 

このことからも、条約と条規に大きな違いはないと言えます。

 

③江戸幕府の開国以降も使用されている理由は言語

この条約という言葉は、日米和親条約日米修好通商条約からもわかるように、開国後にも使用されています。

 

 

ですが、ここでお気づきだと思いますが、アメリカ相手では漢文ではなく、英語と日本語の使用となりますよね。

 

ですので、これらの条約は英語と日本語で書かれているというところからも、英語には条規というワードもなく、世界共通で意味を成す”条約”としていた、という説も考えられますよね。

 

まとめ

 条約と条規という用語に大きな差はない。

 読み方が違うからといって、効力に優劣がない。

 使われていた相手国が違い、条規は漢字文化圏(中国・日本・朝鮮・ベトナム・琉球など)に対して使用されていたが、条約はそのほかの言語文化圏で使用されていた。

 含まれている内容がちょっと違い、条規では国家間の合意だけでなく、条約とは別に条約に付随する規定(特に法令)も含めて表されている。条約は国際法に基づく国家間の合意事項とされているが、双方に大きな差はない。

 条規が使用されていた背景には諸説あり、当時の中国や朝鮮が、条約のことを条規と呼んでいたという説が有力。

 明治時代の黎明期以外で”条規”という用語が外国文書で登場することがない。これは明治時代初期の混乱期で、本来条約とするところが見逃された可能性もある。

 条規は、条約に法令が付随されているのが本来の意味だが、条約にも法令が入っていることから、やはり条規と条約はほぼイコールといえる。

 条約という用語は、漢字文化圏以外では通常に使用されている。

 条約は本来、国際法に基づく国家間の合意事項という意味だが、日米修好通商条約のように、法令に基づく合意も含まれていることから、条規と意味が一緒であるといえる。