【儒学と朱子学の違い】簡単にわかりやすく解説!!それぞれの意味など

 

歴史を勉強していると、良く出てくるのが儒教という宗教。

 

儒教は、中国の3大宗教のひとつ。儒教では、広くは祖先をお祀りし、子孫を残すという概念をもつ宗教であり、狭くは自分の親への孝行に励むこととされています。

 

その中には、儒教という、儒教において信仰されている狭義での孝を巡って展開される学問の他に、儒学から派生した朱子学というものがあります。

 

今回は双方の違いについて簡単にわかりやすく説明をしていきます。

 

儒学と朱子学の違い

 

では最初に、儒教と朱子学の違いについて、まとめてみます。

 

〇発祥が違う

儒学・・・儒教に倫理的反省点を加えて展開した、儒教を説く学問。儒教とイコール

朱子学・・・儒教を朱熹(しゅき)が整備した新しい学問

〇重んじている部分が違う

儒学・・・五常五倫を重んじ、家族を中心とした父母兄弟を大切にすること

朱子学・・・大義名分論・君臣父子の別で、上下関係を大切にすること

〇関わる人数が異なる

儒学・・・孔子を発端に、孟子・老子・荀子などといった多くの人たちによって深められる

朱子学・・・儒学を元に朱熹が独自にアレンジ

 

それでは詳しく見ていきましょう。

 

儒学について詳しく解説!

(儒教の始祖、孔子 出典:Wikipedia)

 

 

儒学は、思想家である孔子によって、中国の宗教的世界観である孝の教えを倫理的な反省点を加えたもの。

 

諸国が争い合う春秋戦国時代に、儒教を説く学問のことです。

 

儒教は、2500年以上に渡り、中国をはじめ、日本や東南アジア諸国にも多大なる影響を与えています。

 

①儒教とは=儒学

そのため、儒教を理解することが、儒学を理解する第一歩といえます。

 

むしろ、儒教=儒学と覚えてしまいましょう。

 

冒頭でもお話の通り、中国の3宗教でもある儒教は、孝を重んじる宗教です。

 

儒教の思想は、古代中国の堯・舜などといった君子たちの政治を理想とし、仁義(人を愛すること)を理想都市、義礼を学習・実践することが、非常に重んじられています。

 

国同士が領地を争い、戦う中で、武力による支配をしようとする覇道を批判し、君子の言うことを聞き、君子の徳によって天下を治め、政治を行うべきだという王道を唱えたものです。

 

また、儒教は孔子だけでなく、老子・孟子・荀子が後に儒教の理解を深めていきます。

 

②儒教の教え「五常」と「五倫」

儒教の教えには、孔子が唱えた「五常」と「五倫」というものがあります。

 

人は、「仁・義・礼・智・信」からなる「五常」を守ることで、「五倫」という自信と関わり合う「父子・君臣・夫婦・長幼・朋友」の関係を良好に保つことに努めなければならないという内容です。

 

特に五常の中でも特に「仁(人と接する心の在り方、思いやり・真心)」が重んじられ、家族を中心とした父母兄弟を大切にすることが説かれている点がポイントです。

 

③五常とはなにか

まず、孔子が唱えた五常を簡単に説明します。

 

  • 仁・・・人を愛し、思いやること。「五常」の中でも特に重んじられている
  • 義・・・利や欲にとらわれず、世のため人のために行動すること。日本の武将、上杉謙信が「義の武将」と呼ばれているのも、この孔子の五常からきています
  • 礼・・・謙遜し、相手に敬意を払って接すること。「仁」を具体的な行動にしたものが礼とされ、後に人と関わるうえで守るべきことを意味するようになります
  • 智・・・偏らずに幅広い知識や知恵を得て、道理をわきまえることで、善悪を判断すること。
  • 信・・・人を欺かず、人からは信頼してもらえるように常に約束を守り、誠実であること。

     

    この5つを守れば「五倫」、すなわち父子・君臣・夫婦・長幼・朋友などの人間関係がうまくいく、ということに繋がるという考え方です。

     

    ④孔子以後は「孟子」や「荀子」が学説を深めた

    孔子の死後は、その弟子たちや、またその弟子の弟子たちによって、儒教の思想や学説がどんどん深められていきます。

     

    特に孟子は哲学としての儒教を深め、荀子は文献学として儒教を深めました。

     

    朱子学について詳しく解説!

    (朱熹 出典:Wikipedia)

     

     

    朱子学とは、南宋時代の頃の学問です。

     

    孔子らによって深められた儒教(=儒学)を元に朱熹(しゅき)が整備したことから、朱子学と呼ばれています。

     

    大義名分論」が中心となった、儒教(儒学)の新しい体系なんです。

     

    ①朱子学の基本的考え方「大義名分論」

    朱子学の基本は、身分秩序や格物致知、理気二元論という考え方です。

     

    特に身分秩序に関しては、自然や万物に上下関係・尊卑があるように、人間社会にも同じように上下関係や、差別があって然るべきという考え方です。

     

    これを君臣父子の別といい、「君主の言うことを臣下は絶対聞くこと」「父の言うことを子供は絶対聞く」を意味します。

     

     

    ②理気二元論とは?

    理気二元論とは、世の中のすべてのものや事柄は「理」と「気」の2つからなるとするものです。

     

    わかりやすく言うと、下記の通りになります。

     

    • 「理」・・・万物がこの世に存在する根拠
    • 「気」・・・万物を構成する物質

       

      このように「理」と「気」は、全く別の存在です。

       

      しかし、互いに単体では存在することができず、付かず離れずの距離で互いに働きあう「不離不雑」の関係とされています。

       

      ③朱子学の思想は政治に使いやすい

      朱子学の思想は、その大義名分論・君臣父子の別から、非常に政治に使いやすいという点があります。

       

      「理」や「礼」を重んじる朱子学の思想は、時とともにその考え方だけ一人歩き。

       

      朱熹が目指した学問とは遠いものへと変わってしまいます。

       

      朱子学はまさに、国を統治する側にとって都合のよいものとされてしまいました。

       

      日本の封建社会もそうですが、中国における成績の良い人が優遇される学歴社会、官僚社会を生み出し、社会の秩序を統制するために利用されるようになってしまいます。

       

      同時にあった道徳主義的側面が失われてしまい、政治的腐敗を招く結果にとなってしまいました。

       

      朱子学は、日本における封建社会を守る学問でした。

       

      要するに、「権力者には逆らうな」という思想として日本では定着し、主君と家来という上下関係を強める発端になったといわれています。

       

      分かりやすい例を挙げるとしたら、朱子学を採用した江戸幕府。江戸幕府では、朱子学を用い、秩序に重んじた保守的な体制を作り上げることに成功しました。

       

      しかし江戸幕府は、この朱子学の本来の思想において都合のいい部分だけを受容したことにより、後に封建社会の崩壊を招いてしまいます。

       

      まとめ

       発祥が違う点は、儒学は儒教を説く学問で、儒教とイコール。朱子学は儒教を整備し、体系化した新しい学問。

       重んじている部分が違う点は、儒学は家族を中心とした父母兄弟、さらには友人君子を大切にするところに重きを置くのに対し、朱子学では上下関係を大切にすることに重きを置いている。

       関わる人数が異なる点は、儒学は孔子を発端に、その弟子たちや、またその弟子の弟子たちによって思想や儒学が深められ、朱子学は儒学を元に朱熹が独自にアレンジした学問である。